| 2006年 11月 2日(木)
人の評価は5分で決まる@ 西山 昭彦 |
五年前人材紹介会社の転職斡旋の担当者にヒアリング調査をした時に、「ミドルは面接がへたすぎる」という声をたくさん聞いた。「どうだめですか」と聞き返すと、ある担当者は一瞬困った顔をしてから、「うーん。かなりの部分で見直さないとだめだね」と答えた。 企業から依頼を受け、預かった社員を研修し、他企業に出向、再就職を斡旋するアウトプレースメント会社では、そのころさかんに、あいさつの練習、話し方、マナーの訓練から、その内容まで徹底した面接指導をしていた。その模様を見学させてもらったが、確かにあいさつのことばがこわばたっり、少し横向いて座っていたり、「これでは・・」と思うケースはたくさんあった。ちょうど取材にきていたTV局の人は、50代の人が「おはようございます!」を何度も唱和させられている姿を撮りながら、「なんか悲しくなるね」と同情していたが。 アウトプレースメント会社では同時に、登録者が履歴書が書けないということで、その書き直しを何度も何度もやらせていた。当時の調査先の空気は、早期退職の募集より、会社の指名でアウトプレースメント会社に出向し、そこから行き先の会社を探し移るという形が多く、「なんで俺がアウトプレースメントの対象に選ばれたんだ」という思いが強い人がけっこういた。 だから、コンサルタントの初めの仕事は、その気持ちを転換させることだった。「まずエリートのプライドを捨てさせられるかが、再就職が成功するかの最初の分岐点だ」と、あるコンサルタントはいった。そこからはじめ、上の履歴書と面接練習を二大要素としたプログラムを提供していた。 そのときの給与の相場は、1200万円の部長代理クラスが650万円で中小企業に行くが、平均的だった。でも、ある大手化学メーカーは、60歳まで出向扱いにして、給与の差額を本社が負担していた。行き先が決まる成約までの期間は約半年だった。(もちろん、 1年という人もいたが、例外的だった)。しかし、今後対象が増えても、このまま転出先が見つかるのか、不安がよぎった。担当者も、「年々厳しくなっている」と認めていた。 <今も変わらず> あれから、五年が過ぎた。とっくにこれらの情報は大企業社員につたわリ、次は自分たちと先回りして、情報を集め対策を打っているかと思いきや、アウトプレースメント会社ではまったくおなじ光景が繰り返されている。履歴書を直し、面接の練習をやっている。それらの内容は、当時と異なり、現在では書店にコーナーができるほど流通している。また、再就職の厳しさは、雑誌や先輩からたくさん聞けたはずなのに、事情の認識はまったくのゼロから始められている。 当時との違いは、出向が消え、早期退職に自ら応募して、このサービスを受けている人がほとんどだという点だ。アウトプレースメント会社の社長は、三年前「再就職と、出向両方やってきたが、相手の企業が真剣な再就職の人のほうがいいという場合が多いので、出向はもうやめようと思っている」といっていた。それが、背景にあるのかもしれない。 ところで、履歴書は書き方を指導してもらえば、誰でもレベルアップできる。一方、面接は練習はできても、やり直しの聞かない真剣勝負だ。相手の会社に行き、面接をする。それで、採用が決まる。やはり、この世界は面接が勝負だ。これは、五年前といささかも変わらない。 この面接の指導をする人材紹介会社の担当者は、毎日登録者に会い、その評価を繰り返している。相手先企業から、評価を聞いている。つまり、人を見る熟練者だ。人の目利きは、いったいどこを見ているのか。これらの人々に評価されるのは、どんな人なのか。それがわかれば、自分をもっとよく売ることができるはずだ。 |
| 2006年 11月 17日(金)
人の評価は5分で決まるA 西山 昭彦 |
| <弱い新人> 私のところに来る、会社を辞めたいという二十代、三十代の人の相談では、「仕事はそこそこ面白く充実感はあるけれども、人間関係がうまくいかない」、「上司、先輩と合わない」、「女性の先輩にいじめられる」などが主たる原因になっている。実際調査をしてみると、満足度は第一に仕事そのものによるが、二番目は人間関係から得られている。ところが、ひとたび人間関係のトラブルが大きくなると、仕事そのものもつまらなくなって、会社生活が苦しくなってしまう。 七十歳を過ぎた方で、地域コミュニティでいつも仲良しだったが、何かトラブルがあって大喧嘩をしてしまった。だんだん対立が激しくなり、最後はその地域から引越してしまった。あるいは、会社の仲良しと一緒に広めの土地を買って、ニ分割して、それぞれ家を建てた。あるとき境界線のことでけんかになり、一切口を聞かなくなった。双方の会社の部下も、仕事でつながりがあるから、本当に困ったという事例がある。これなども人間関係が壊れると、生活全般に影響する例である。でも、弱さはやはり、若い方が際立っている。 <学生の場合> なぜ若い人たちは、人間関係に弱いのだろうか。深い人間関係が作れない。小さい頃から、親からも教師からも、めちゃくちゃに怒られたことがないし、白熱した議論を展開したこともない。大学のゼミで3年生に議論してもらったとき、ある学生が「生まれて初めて学校で議論した」といった。「小学校から2年生までは、一方的に先生が言うことを聞いてればよかった。発言する必要がなかった。だから、今どうしていいかわからない」という学生もいた。一方私立高校出身で、議論をしてきた人たちは、大学でもスムーズに入れ、議論をリードする。 議論をしてない人々の増加は、日本全体で見ると、大変な問題だ。かっての学生は、徹底して友達と議論をしあったものだ。でも今は相手の嫌がることはしない。傷付くことはしないという姿勢を取る。だからゼミで真剣に議論といっても、なかなか相手のいうことを批判、否定しない。その結果、友達同士でも極めて淡い関係ができる。携帯ツールというのは便利なもので、常時喋っているけれども、言っている内容は浅いことばかりだ。だから長時間話さないとコミュニケーションの総量が得られない。 人間は本来コミュニケーションしたいという欲求があるので、浅く接していれば、量で拡大するしかない。私の学生時代は、週一回しか会わなくても、酒を飲んで罵倒しあい、徹底的に議論するので、しばらくはそいつの顔も見たくなくなる。一回が深いから、時々しか会わなくても、コミュニケーションの総量は現在の学生と変わらない。 |
| 2006年 11月 24日(金)
人の評価は5分で決まるB 西山 昭彦 |
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17社落ちて、次に合格した女子学生 ある女子学生が、総合職志望で17社連続落ちた。私のところにSOSを出してきた。会って、模擬面接をしてみると、確かにこれではという結果だった。まず見た感じが暗い。挨拶、マナーもひどい。予期せぬ質問が来ると、30秒くらいだまってしまう。話す内容が、優等生的、マニュアル的でおもしろくない。でも、改めて聞いてみると、クラブ活動で3日、4日部室に泊まって、お風呂に入らなくても大丈夫、化粧はしたことないという。これは、ちょっといないケースだ。 「よし、それでいこう。どんなハードワークでもやります。会社に何日とも泊まっても、耐えられる。それが、私のセールスポイントです」と(実際には、その他にも数点あるが)。 1時間かけて、セールスポイントを引き出し、あいさつ、マナーを変え、復習して送りだした。翌週彼女から連絡がきて、「ある通信大手で役員が笑い転げ、採用になった」という。面接の受け方の大切さと同時に、人の印象は変えられる事例といえる。 <本能か> 原始時代を考えてみよう。知らない人に出くわしたら、味方か敵か即座に判断しなければ、命にかかわる。動物とおなじだ。略奪婚もあった時代なら、女性を見た男性は、自分の好みかどうかを、やはり一瞬で判断していただろう。それが、自分の子孫繁栄となり、人類の存続につながる。 そうすると、人の中には、一瞬で人を見抜く力が内包されていたと考えられる。それは、常に研ぎ澄まされ、くもの巣のように自分の周りにアンテナを張っていたに違いない。 しかし、平和な時代が長く続き、この本能が退化してきた。敵との遭遇と戦闘の危険性という当時の緊張感はまったくなくなり、初めて会った人への関心も薄れ、見抜く力も衰えた。一方、異性の判定はどうか。初めて見て、当時ほど判断できなくなったものの、こちらのほうは、自分の子孫繁栄は課題として続いている。だから、なお好みかどうかの判断は同性に会ったときよりは、はるかに強く残っている。また、女性の側も、略奪はなくなったが、逆に男性をつかまえる機会として出会いは大切なので、自分のPR(化粧やファッション、さらには整形もそこに起源がありそうだ)や相手の吟味は欠かしていない。顔や外見、第一印象の重要性は変わっていないといえる。 さて、人材紹介者の面接者は、いい人を見抜くことが転職の成功件数を増やし、自分の地位や収入の拡大につながる。その結果必然的に、かっての本能の復活を促す。見た瞬間の判断が磨かれるのである。 |
| 2006年 12月 1日(金)
人の評価は5分で決まるC 西山 昭彦 |
<プレゼンが下手> 採用の面接を社内に置き換えると、例えば会議での発表や議論になる。このとき、どういう印象がうまれ、その人の評価はどうなるかだ。その点で、プレゼン下手は日本のサラリーマンの大多数に共通する点ではないだろうか。社内だから、初めて会う人は少ないかもしれないが、会議が始まったときの人の印象はきわめて低い。説明の仕方を見ていると、つまらなそうに書いてあることをそっくりそのまま読み上げて、それで会議が始まる。なんというひどいコミュニケーション力であり、プレゼン力であろうか。 この理由は、一つにプレゼン力が人事考課の評価項目に入っていない会社がほとんどだ。だから社内の会議であれば、そんなことは関係なくて、内容がよければいいんだとみんなが思っている。発表や相手にどう効果的に伝えるか、そういうスキルに関心がない。 でも、考えてみれば、毎日誰と会っても、話しても広い意味のプレゼン力は大事だ。上司を説得するにも、部下の同意を得るにも、会議で賛同を得るにもプレゼン力の比重は高い。実際、週刊ビーイングの調べでは、中途採用の場合に求める第一の能力は、コミュニケーション力だ。人にいい印象を与え、こちらのいうことを理解し、賛同してもらうことが、仕事のアウトプットを高める大きな要件だ。 <プロのプレゼンはどこが違うのか> 小泉首相は非常にプレゼンがうまく、行った先の地方の話を必ず枕に使う。その地方の歌を歌う、好物を話す。そこから入るので、一瞬にして心をとらえてしまう。よく笑わせる。それから自分の世界に引き込んでしまう。必要な点を簡潔に、決意を明快に述べる。最後は、絶叫型となり、聴衆をとらえる。 自分のプレゼン力を高めるには、どうしたらいいだろうか。小泉首相でもいいが、外部のセミナーや講演会に行く機会があれば、そのときのうまい人の真似をするのが一番早い。売れっ子の講演者で、一回三十万とか五十万円の講演料を取る人は、必ずプレゼンがうまい。だから、その講演料でもリピートオーダーが入る。 <広告代理店のプレゼン> その他のプレゼンのプロは、広告代理店社員のプレゼンだ。広告代理店の人がコンペの時にプレゼンするとき、はっとするような驚きがある。言い方がうまい。喜びや笑いもとる。それで指定された時間の中に簡潔にまとめる。この違いは、いったいなんだろうか。 広告代理店のプレゼンターなどはそれで何億、何十億円の商売がかかっているから、必然的に競争原理が働いて伸びることになる。 <米国人のプレゼン> 米国のビジネスマンを見ると、みんな印象マネジメント、プレゼンがうまい。最初に笑わす。飽きさせない。寝させない。以前アメリカ人のスピーカーが日本に来たとき、オーディエンスの三分の一が寝ているのを見て、びっくりしていた。アメリカ人の聴衆は寝ない。寝させないというのも、プレゼンターの責任だ。 外資系の会社で聞いたら、会社の中で発表は能力考課される場合の重要部分という。日本なら、「文章見れば、だいたいわかる」というが、違う。「プレゼンみれば、だいたいわかる」だ。だから、社員は発表に力を入れる。自分がだめと見られるか、できると評価されるかが、それで決まれば、社員は力を入れるし、うまくもなる。 大学の教員の授業も非常にライブリーだ。私が留学していたのは二十年前だが、プレゼンターとしては現在の日本の教員よりはるかにうまかった。 |